借入金が膨らんでしまい、どうしても返済が出来ず生活が成り行かなくなりそうになった場合や、返済に関するペースを見直してみたいという場合、債務整理という手段を行うことが可能です。
しかし、債務整理の仕組みやメリット・デメリットが分からないから、債務整理へ一歩を踏み出せない方も多いです。
そのため、無理をしてでも金策するために、闇金に走るなど取り返しのつかないケースにまでなってしまうのです。
この記事では、債務整理について、それぞれの手段ごとの特徴やメリット・デメリットについてご紹介していきます。
3分程度で読めますので、是非参考にしていただき、どうしてもお金にこまって行き詰ってしまったら債務整理を検討してみてください。
債務整理は4つある手続きによって仕組みが違う
債務整理には、4つの手段があるということをご存知でしょうか。
今回は、それぞれの手段ごとの仕組みや特徴、メリット・デメリットについてご紹介していきます。
債務整理その1:任意整理の仕組みとメリット・デメリット
まずは、任意整理という債務整理の手段についてのメリットやデメリットを見ていきましょう。
任意整理の仕組みについて
最初に、任意整理の仕組みについて確認しましょう。
任意整理とは、お金を貸している側である消費者金融や銀行などの債権者と改めて相談をし、これくらいの期間・金額であれば確実に返済ができるという手段を提案することによって、借金の返済方法を改めて決定していく方法のことを言います。
任意整理は債権者、債務者双方にメリットがあります。
- 債権者側:多少遅れてでも確実にお金を回収できる
- 債務者側:無理のない返済ペースを組み立てることができ、コツコツ返済することよって当面の生活を成り立たせることができる
任意整理のメリット
改めて、任意整理をするメリットについて項目別に確認していきましょう。
代理人が交渉を行うため直接の返済催促はなくなる
任意整理の場合、弁護士など専門知識とノウハウを持つ代理人を選出して手続きを行うのが一般的です。
そうした代理人が債権者と直接交渉を行う窓口となってくれるため、借入金返済のための催促が一旦なくなります。
自宅に督促状が届く、自宅や職場を訪問される、頻繁な電話連絡がある、というようなコンタクトもなくなりますので、精神的な負担が減るメリットがあると言えるでしょう。
債務額が減額され、月々の支払いが楽になる場合もある
債権者と債務者(もしくは債務者の代理人)とで話し合いを行って改めて返済のペースを決定する、という任意整理の性格上、債務額が減額されたり利息がカットされたりすることが起きます。
そうすれば返済するべき借金の総額が大きく減ることとなり、場合によっては返済期間を延ばしてもらったりすることも可能であるため、月々の支払いが楽になるでしょう。
その分余裕を持って地道にコツコツと返済していくことができるようになります。
借金の整理をすることで利息がゼロになる場合もある
また、借金の整理をすることで利息がゼロになる場合もあります。
債務者が任意整理の手続きに入っているということは、債権者にとっては貸したお金が返ってこないリスクについても考える必要があり、最悪の場合は利息をなしにして元本だけでも返済してほしいという考えに至ることがあるのです。
あくまでも債務者の資金状況や交渉手段によりますので必ず起こることではありませんが、利息がゼロになれば、債務額が減少する以上のメリットが得られるでしょう。
対象とする債権者を選べる
任意整理をする場合、全ての借入金に対して任意整理をしなければいけないわけではありません。
相談をする債権者を選べるため、消費者金融からの借入金に対してのみ任意整理を行い、住宅ローンについてはそのまま予定通りの返済を続ける、といった道を選ぶことも可能です。
特に親戚や知人からお金を借りている場合、そういった近しい関係の人たちに家計状況を知られたくないと考える人も多く、任意整理の対象としないことでバレるのを防げるメリットもあります。
また、任意整理を行うことによって債権者から保証人に督促がいくケースもあるため、家族や親戚に保証人になってもらっている借入については任意整理をしないということも可能です。
任意整理のデメリット・リスク
今度は、任意整理をするに当たってのデメリット・リスクについても考えて行きましょう。
借金を大きく減額出来ない
任意整理の本質は、借金を減額することではなく借金を無理なく返済できるようにペース配分を相談しなおす、というところにあります。
相談内容によっては利息がカットされたり元本が減額されたりしますが、大きな減額は期待できないでしょう。
また、債権者と相談したものの思うような結果に着地せず、あまり任意整理に踏み込んだ効果を実感できなかったというケースも存在します。
もし任意整理を行う場合は、債権者に対してどうこちらの希望を通すか、返済ペースに納得していただくか、ということを考えていく必要が出てきます。
債権者の同意が必要
任意整理はあくまでも、債権者と債務者(もしくは債務者の代理人)との話し合いで行われます。
債権者にとっては必ず話し合いに応じる義務もなく、提示された内容に承諾する義務もないため、交渉が決裂したり、思うような結果に着地しなかったために当初の予定より返済が楽にならなかったりといったケースも発生します。
同意が得られるかどうかという部分が要となりますので、交渉には自分1人で臨もうとせず、専門知識のある代理人と協力体制を敷いた方がよいとも言えるでしょう。
信用情報に債務整理の履歴が残る
任意整理をした場合、個人信用情報機関に事故情報として履歴が残ります。
いわゆるブラックリスト登録ですので、
- クレジットカードが持てない
- 家族カードが更新できない
- スマートフォンの本体代を分割で購入できない
などの様々なデメリットが発生します。
信用情報機関に登録されると5年~10年は借入ができない
同じく、個人信用情報機関に事故情報として登録されるということは、今後しばらく借入ができないということにも繋がります。
任意整理をした借入金の額にもよりますが、一般的には5~10年間は新しい借入ができないと言われていますのでよく確認をしておきましょう。
住宅ローン、車のローンなども組めなくなりますので、大きな買い物をするとなった時に現金一括購入以外の方法が選択できなくなります。
また、子どもの進路に関わる教育ローンなども組めなくなります。
あくまでも個人信用情報機関に登録されるのは任意整理をした本人だけであるため、配偶者名義でローンを組むことは可能ではありますが、配偶者が自分と同等かそれ以上の収入を得ているなどローンを組めるだけの体力があるかどうかについても慎重に検討が必要です。
信用情報機関
任意整理をするための条件と有効な人
任意整理のメリットは多数ありますが、希望すれば誰でも任意整理の手段が取れるというわけではありません。
まず、減額後の借金について一般的に3年程度で完済できるということが任意整理に進む条件となります。
収入の安定性や持っている資産と照らし合わせた上で、ペース配分さえ落とせば確実に完済できると債権者が判断し、合意した場合にしか任意整理手続きは完了しません。
もし任意整理を希望する場合は、現在の収支のバランスをしっかりと考えた上で作戦立てが必要です。
債務整理その2:特定調停の仕組みとメリット・デメリット
次に、特定調停という債務整理手段についてのメリットやデメリットを見ていきましょう。
特定調停の仕組みについて
最初に、特定調停の仕組みについて確認しましょう。
特定調停は、任意整理同様に債権者と債務者とで話し合いを行い、借入金の返済ペースを決め直す手段のことを指します。
任意整理と異なるのは、債務者の代理人になるのが弁護士か、裁判所かという点にあります。
特定調停の場合は裁判所が仲裁人となって債務者と債権者の間に立ち、和解の成立を手助けしてくれます。
特定調停のメリット
改めて、特定調停をするメリットについて項目別に確認していきましょう。
自分で出来るくらい手続きが簡単で費用を安く抑えられる
特定調停の最大のメリットは、弁護士などの専門家を挟まずとも比較的簡単に手続き完了ができるという点にあります。
依頼費用も発生しないため手続きにかかるお金も安く抑えることができるので、事務手数料について心配な人は特定調停を考えるのも有効だと言えるでしょう。
裁判所を介するので、債権者と交渉しなくて済む
特定調停の場合は必ず裁判所を間に挟みますので、消費者金融や銀行の担当者と債務者本人が直接交渉しなくても済むようになっています。
精神的な負担を軽減するだけではなく、交渉が上手く運ばない、相手にされないといったリスクを背負う必要もないので、代理人を立たせず交渉するよりも手続きにかかる時間も短くて済みます。
借金を整理しても財産が手元に残る
任意整理同様、特定調停はどの借入金について返済交渉をするかを選ぶことが可能です。
手元に残しておきたい住宅や車に関する借入金は債務整理の対象とせず、それ以外の部分について特定調停を行えば、返済を楽にしつつ手元に財産を残すことが可能となります。
特定調停のデメリット・リスク
今度は、特定調停をするに当たってのデメリット・リスクについても考えて行きましょう。
思ったほど借金額が減らない可能性もある
任意整理同様、あくまでも債権者側の合意が必要となるのが特定調停の特徴であるため、こちらが提示した内容に同意してくれない、調停の内容が思っていた条件と異なる、などの内容で借金額がそれほど減らないケースもあることに注意しておきましょう。
調停の内容によっては債務者に不利になってしまうこともあり成功率は低い
裁判所が選出した調停委員は、債務整理のプロでないことが多いのが現状です。
引き直し計算を行っていない、将来利息をつけた調停など、最終的に不利な調停結果となるケースも存在するので注意が必要です。
また、申立人にとって不利な条件を提示されたとしても素人にとってはその条件の正当性がきちんと判断できず、言われるがままの内容で合意してしまうと返済が予想より楽にならず、せっかく債務整理を行っても効果があまり実感できないということも起こり得ます。
過払い金請求ができない
特定調停は利息制限法の上限金利と用いて引き直し計算を行い、その結果減額された借金についての返済ペースを決める手段であるため、過払い金請求することが出来ません。
過払い金請求をしたい場合は別途裁判所に訴訟提起する必要があります。
特定調停をするための条件と有効な人
特定調停を行った後も借金の返済は続くため、同意した調停内容通りに返済ができそうかどうかというのは厳しい目でチェックされます。
そのため、安定した収入があるかどうか、返済できないような莫大な金額を抱えていないかどうかというのが第一条件となります。
また、あくまでも特定調停は債務者本人による裁判所への申し立てによって行われます。
そのため、月1回程度のペースで3~4回裁判所に出廷する必要があるため、その日は仕事を休むなどの調整を利かせる必要も出てきます。
債務整理その3:個人再生の仕組みとメリット・デメリット
次に、個人再生という債務整理手段についてのメリットやデメリットを見ていきましょう。
個人再生の仕組み
個人再生とは、民事再生とも呼ばれている債務整理の手段です。
裁判所に申し立てを行うことで、抱えている借入金を大きく減額してもらうことが可能です。
借入金の総額が5分の1程度にまで圧縮できる可能性もあるため、現在返済に苦しんでいるという人にとっては有効な手段となり得るでしょう。
個人再生のメリット
まずは、個人再生という債務整理手段についてのメリットやデメリットを見ていきましょう。
代理人が手続きをすることで直接の返済催促はなくなる
任意整理と同じく、弁護士などの専門家に代理人として手続きを進めてもらうのが一般的なため、債権者からの返済催促がなくなるのがメリットです。
督促状などの郵便物や電話での連絡を含め、返済に関わる一切の連絡が一度止みますので、落ち着いて弁護士と相談する時間も取れ、精神的な負担も軽減されます。
任意整理と比較すると大幅に借金の減額が期待できる
個人再生の場合、任意整理以上に借金総額が減る効果が期待できます。
任意整理の場合、支払いに関する利息はカットしてもらえるものの、借入を行った元本そのものについてはあまり減額にならないケースが多いのが特徴です。
一方で個人再生の場合は元本ごと大きく減額をしてもらうことができますので、無理なく借金を返済していくことが可能となるでしょう。
条件が整えば住宅(住宅ローン特則)を手放すことなく手続きができる
個人再生の特徴の1つに、住宅ローン特則という制度があります。
借金が膨らんでどうにも返済が成り行かなくなってしまった場合、持ちうる全ての資産を売却しなければならないという印象を持つ方も多いですが、個人再生の場合は住宅ローン特則制度を利用することによって、家を手放さず借金の返済を続けるということも可能になります。
家族に与える影響も比較的少なくて済みますので、自分の家を既に持っているという人は個人再生の手段について考えてみるのがいいかもしれません。
強制執行を止めることができる
借金の返済が滞ってしまった場合、債権者は債務者の職場に依頼して給与を止める「強制執行」をすることが出来ます。
強制執行をされても給与の全額が返済に充てられるわけではなく最低限生活できるだけの金額は本人に渡るようになっているとはいえ、手取り額が減るので家計に大きなダメージを与えます。
また、借金を抱えているということが当然職場の人にもバレてしまうので、仕事がやりづらくなるリスクも孕んでいます。
しかし、個人再生(民事再生)の手続きと同時に「強制執行中止命令の申立」を行うことで、こうした強制執行を止めることが出来ます。
債務整理手続きに集中することが出来るので、精神的な負担も軽くなると言えるでしょう。
財産がなくならない
個人再生(民事再生)の場合、財産を処分しなくても済むというのもメリットです。
住宅ローン特則制度を利用して今までと同じ自宅に住み続けたり、ローンの終わっている自家用車であれば手放さずに手元に置いたりするなど、これまでと変わらない暮らしを送りやすいのも特徴だと言えます。
浪費やギャンブルが原因でも問題にならない
債務整理を行う場合、借金をするに至った理由について調査が入るケースがあります。
子どもの学費、両親の介護費、生活費などの理由と比べると、どうしても浪費癖やギャンブル依存症を理由とした借金では、債権者の心象も悪いものです。
しかし、個人再生(民事再生)であれば間に裁判所を挟みますので、借金の理由を問わず同じ条件上で手続きできる可能性があります。
個人再生のデメリット・リスク
今度は、個人再生をするに当たってのデメリット・リスクについても考えて行きましょう。
信用情報機関に個人再生の履歴が残る
任意整理と同様、個人信用情報機関に事故情報として履歴残ります。
当然しばらくはローンも組めなくなりますので、大きな買い物は出来ないと理解しておくとよいでしょう。
また、クレジットカードやスマートフォンの本体代分割支払いといったことも出来なくなり、新しい消費者金融や銀行等からの借入も出来なくなります。
個人再生の事実が官報で公告される
個人再生の手段を取った場合、官報に氏名や住所が掲載されます。
弁護士や税理士、金融関係の職業でない一般の人でも閲覧することが出来る情報なので、近所の人や職場の同僚に個人再生の事実がバレる可能性があります。
手続きが面倒
裁判所を介して手続きを行わなければいけない個人再生については、手続きが非常に煩雑で面倒であるという特徴もあります。
申請書類や、資産・借入金について証明するための添付書類、住宅ローン特則についての書類など、準備物が多岐に渡るだけでなく厳しい決まりもありますので、プロが行っても手続き完了までに半年~1年程度かかると言われています。
準備を行っている間に現在抱えている借入金の返済期限が来てしまってどうにも手続きが取れなくなるといったことも考えられますので、個人再生について検討しているのであれば早めに動き出すか、専門家に相談をするのがよいでしょう。
積立金が必要
個人再生(民事再生)の申し立てを行うと、借金を減額すれば本当にきちんと返済が出来るのかどうか、テストのようなことが行われます。
今ある返済を一旦止めた上で、個人再生後に毎月返済することになる金額をきちんと銀行口座に積み立てていくことが出来るかどうかで判断されるのが一般的で、この積立金を用意しなければいけないのが個人再生のデメリットだとも言えるでしょう。
もし積立を行っている最中に、切り崩して生活費やギャンブル費として使用してしまった場合は一気に信用も下がりますので、個人再生の決定が下りない可能性も出てきます。
費用が高い
個人再生の手続きそのものには、収入印紙や官報掲載費、郵送費などで25,000円程度あれば問題ありません。
しかし、債務者との面談や資産調査をするために個人再生委員という人が充てられた場合、その費用として別途20~30万円程度かかるのが一般的です。
中には自分で弁護士を立てて個人再生委員へ支払う金額を減らすという人もいますが、弁護士に支払う費用も用意しなければならないため費用が高くなりがちなのはデメリットと言えます。
厳しい収入要件が必要
個人再生(民事再生)をすると、返済するべき借金の総額を大幅に減らしてもらえるというメリットがある一方で、それだけのことをするのであれば残りの借入分についてはきちんと返済をしなければならないという義務も発生します。
そのため、個人再生手続き後の返済が本当に無理なく出来るだけの収入があるのかということが非常に重視され、就業の状況や家計収支についても細かく聞かれることとなります。
もし個人再生に見合うだけの収支バランスが取れていないと見なされた場合は手続き完了に至りません。
個人再生の条件と有効な人
個人再生を行う場合にも、条件があります。
まずは安定した収入があること、借金総額が5,000万円以下であること、という条件をクリアして初めて個人再生の手続きに入ることが出来るようになります。
借金総額については、住宅ローン特則制度を利用する場合住宅ローンの金額を含まずに計算し、また利息制限法の引き直し計算を行って過払い金の調整を行った最終的な借金総額のことを指します。
自分の正確な借金総額を一度計算しなおしてみるのがポイントと言えるでしょう。
個人再生は、家計を共にしている家族や子どもがいて引っ越しをしたくない、住宅を手放したくない人にとってはメリットの多い債務整理手段です。
デメリットや条件についても比較検討の上で手続きを進めるようにしましょう。
債務整理その4:自己破産の仕組みとメリット・デメリット
次に、自己破産という債務整理手段についてのメリットやデメリットを見ていきましょう。
自己破産の仕組み
先ほどまでのどの債務整理手段も行えないような大きな借入金がある場合や、収入や資産が安定しないため借金総額が減っても返済の見込みが立たない場合は、自己破産という債務整理手段を選択することとなります。
裁判所に申し立てを行うことで全ての借金がゼロになるというのが自己破産手続きの最大の特徴であり、金銭的負担だけではなく精神的な負担からも解放されます。
ただし、デメリットが多いともいえるため「ゼロからのスタート」になることを見越して慎重に判断しましょう。
自己破産のメリット
まずは、自己破産という債務整理手段についてのメリットやデメリットを見ていきましょう。
免責手続きにより借金の支払い義務がなくなる
自己破産を行う上で、免責手続きというステップを踏むことによる全ての借金がゼロになります。
そのため今抱えている借入金についても返済の義務がなくなり、生活を立て直すことを第一優先として考えることが可能となります。
今後に必要な財産と現金は残すことができる(強制執行を止める)
生活を立て直し、最低限の暮らしを送るために必要な財産や現金は手元に残すことが可能です。
自己破産の手続きに入った場合は持ちうる全ての資産を処分し、今の借金に充てなければいけないのが原則ではありますが、1円も手元に残らないようでは衣食住の全てを失うことになりかねません。
最低限の生活を保障する範囲内での資金は残せるよう計算されていますので、当面の暮らしについて心配する必要はありません。
無職無収入でも手続出来る
自己破産は、無職無収入の人でも手続きが可能です。
他の債務整理手段では、安定した収入がなかったり借入金の金額があまりにも膨大だったりする場合は手続きが出来ないというケースもありますが、自己破産は借金がゼロになるという性格上無職の人でも手続きが可能です。
生活保護を受給する障害にならない
自己破産手続きをした場合でも、生活保護を受給する障害にはなりません。
生活を支援してくれる人がおらず、収入や資産がなく、最低限の生活レベルを維持できないと判断された場合には生活保護の受給が出来ますし、場合によっては自己破産手続きにかかる費用を援助してもらえることもあります。
自己破産手続き後の生活も成り立たなさそうな場合は、早めに相談しておくとよいでしょう。
自己破産のデメリット・リスク
今度は、自己破産をするに当たってのデメリット・リスクについても考えて行きましょう。
信用情報機関に自己破産の履歴が残る
任意整理や個人再生の時同様、個人信用情報機関に自己破産の履歴は残ります。
上手く生活を立て直すことが出来たとしても過去債務整理を踏んだということは残りますので、新規のローンや借入には影響すると考えておくとよいでしょう。
財産処分をする必要がある
最低限の生活を送る上で必要となる金額や資産を除き、基本的には全ての財産を処分する必要があります。
現金預金、住宅、車、株式、生命保険、退職金、ローンの残っているスマートフォンなどその対象は多岐に渡りますので、持ちうる全ての資産を売却するようなイメージでいるとよいでしょう。
自己破産の事実が官報で公告される
個人再生の時同様、自己破産の事実は官報に住所や氏名と共に掲載されます。
一般個人でも閲覧が可能な情報なので、職場や親戚、近所の人にバレる可能性があることは知っておいた方がよいでしょう。
一部の仕事の資格に関して制限がかかる
自己破産をした場合、一部の仕事をする資格に関して制限がかかります。
具体的には、弁護士や司法書士、行政書士などの士業、生命保険の営業、警備員、建築業、団体企業の役員、公務員の委員長などに就くことが出来なくなるという制度なので、今の職業がこれらに当てはまる場合は退職せざるを得ないでしょう。
ゼロにする借入金の総額にもよりますが、数年~十数年経過すれば復権が認められます。
それまでは他の仕事で生計を立てるしかありません。
免責不許可事由がある
自己破産手続きは、希望すれば誰しもが行えるわけではありません。
借金をした原因が過剰な程のギャンブルや浪費行為によるものであった場合や、裁判所へ虚偽の報告をした場合、財産を隠蔽した場合などには自己破産手続きが出来ないこともありますので注意が必要です。
また、どうせ借金がゼロになるからという理由で手続き直前に新たに多額の借金をしたり、クレジットカード等を利用して買い物を繰り返したりした場合にも適用されますので、直前の行動には特に慎重になるべきでしょう。
費用が高額になることがある
自己破産手続きにかかる費用は、債務者の状態によって大きく異なります。
持っている財産が少なかったり自己破産に至る理由が明確な場合は20万円程度から手続きすることが可能ですが、ある程度の財産を持っていたり自己破産に至る理由がギャンブルであったりする場合などは、詳細を調査する人を立てなければいけないため80万円程度かかる場合もあります。
裁判所への着手金となる「予納金」も納めなくてはならないため、最終的に負担しなければいけない金額が高額になるケースもあると覚えておきましょう。
法テラスの民事扶助制度を利用する、分割で支払っていくなどの対策を打ちつつ、金額についても試算しておくとよいでしょう。
自己破産をするための条件と有効な人
自己破産は、借金がゼロになるという特殊な性格あるため希望する誰しもが申請可能というわけではありません。
まずは、借入金の総額や収入、資産状況、年齢や家族構成、健康状態などを加味して、本当に支払いができない人なのかどうかという審査にクリアすることが絶対条件です。
また、借金をすることになった理由や、詐欺行為・虚実の報告がないかという調査をし、これにもクリアして初めて自己破産が認められます。
ギャンブルや身の丈に合わないショッピング、明らかに不釣り合いな金額を株式に投入するなどの自滅行為をしている場合は借金が免責されないケースもありますので、「最悪自己破産すればいい」という考えの元で借入を繰り返すのは大変危険であると覚えておきましょう。
どの債務整理を選ぶのがよいのか?その判断基準
4種類ある債務整理の方法のうち、どの方法を選ぶのがよいかは人によって違います。
まずは自分の正確な借入金や過払い金、および家計の収支を把握し、どれくらいのペースであれば返済できそうなのかというシミュレーションを行うことが大切です。
返済についての再計画が整うかどうか、どれくらいで返せるのかという内容次第で債務整理の方法を選ぶのが最も確実な手段だと言えるでしょう。
資産評価や引き直し計算など専門知識を使う場合は、お住まいの地域で行われている無料法律相談をはじめとした各種相談機構を頼ってみるのも1つの手です。
債務整理Q&A
ここでは、債務整理について特に多い質問についていくつかピックアップしていきます。
Q1:弁護士や司法書士に依頼しなくても任意整理の手続きは可能?
必ず弁護士や司法書士を立てなくてはならないという決まりはありませんが、自分1人で手続きすることはあまりおススメできません。
普段から債務者とのやり取りに慣れている債権者であれば相手にしてくれないことも多く、お金を借りている側の立場から改めて返済ペースを相談し直しにいくというのは非常に労力がかかります。
債務者にとって悪条件で着地してしまったり、結局支払いが楽にならなかったりといった失敗も考えられますので、専門知識やノウハウを持っている人を味方につけた方がよいでしょう。
Q2:任意整理後にまとまったお金が入り、一括返済したいのですが可能ですか?
一括で返済することも可能です。
全額を一括で返済せずとも、元本を大幅に減らすことができれば精神的な負担も軽減できます。
ただし、どの債権者にも平等に割り振って返済していく必要があるということを覚えておきましょう。
Q3:任意整理後にまたお金がなくなり、消費者金融などからお金を借りたいのですが可能でしょうか?
原則、消費者金融などの金融機関で借りることはできません。
任意整理をすると、個人信用情報機関に事故情報として履歴が残ります。
いわゆるブラック登録ですので、任意整理後にお金を借りたいとなって申込を行ってもほとんど審査で跳ねられてしまうでしょう。
注意ポイント
「債務整理をしていても借りれます」などと謳っている金融機関もありますが、まず借りれることはありませんし、闇金の可能性もありますので注意が必要です。
Q4:結婚を考えているのですが、任意整理をすると結婚に影響するのでしょうか?
基本的には、結婚に影響はありません。
保証人になっていない限り、借金やローンについては夫婦であっても互いに負担し合う義務はないため、配偶者に支払いの督促がいくことはありません。
Q5:借入先から差し押さえ通知が届きました!任意整理すると解除できますか?
差し押さえ通知が届いた場合、解除することは難しいでしょう。
あくまでも任意整理は債権者と債務者との間で返済ペースを相談しなおして合意をすることによる債務整理方法ですので、債権者が給与などを差し押さえる権利自体を奪うことは出来ません。
Q6:任意整理するとアパートや賃貸住宅を追い出されることはありませんか?
アパートや賃貸住宅の場合は、任意整理の手続きを踏むことによって追い出されてしまうことはありません。
個人信用情報機関に登録された情報は消費者金融やローン会社であれば閲覧することが可能ですが、不動産業者は閲覧が出来ないため任意整理したという事実が伝わりません。
ただし、滞納した家賃について任意整理をする場合、弁護士からの通知が不動産業者に届いた段階で立ち退きを依頼されるケースはありますので、任意整理する対象の債務をよく吟味しておくことが大切です。
Q7:任意整理して返済期間を3年にしたのですが、さらに期間延長できますか?
債権者に再度期間延長の相談をすることは可能ですが、必ずしも合意に至るとは限りません。
また、合意に至ったとしても1度目の任意整理と比較して悪条件で着地するケースも少なくありません。
場合によっては、任意整理をしていない部分の債務整理を行ったり個人再生や自己破産に発展せざるを得なくなったりする時もありますので、支払いが厳しくなりそうであれば早めに弁護士などの専門家へ相談しておきましょう。
Q8:任意整理は何度でもできますか?
期間の延長同様、債権者に任意整理の提案をすること自体は可能です。
ただし、あくまでも合意してもらうことが手続き完了に至るまでの条件であるということを忘れないようにしましょう。
債権者が拒否して交渉破談になったり、訴訟を起こされるリスクもあると知っておくことが大切です。
Q9:任意整理したのですが、銀行口座は開設できますか?
任意整理後の銀行口座開設については、特に制限なく行うことが可能です。
口座を作成することは新たに借金をすることとは繋がりませんので、安心して行うことができます。
Q10:銀行のカードローンを任意整理すると、同じ銀行口座はどうなりますか?
銀行のカードローンについて任意整理をした場合は、その銀行の口座は一時凍結される恐れがあります。
任意整理の手続きが完了し次第再稼働できるケースが多いですが、メインバンクとして家賃や光熱費、給与の受け取りとして使用している口座であれば任意整理前に対策しておくことをおススメします。
Q11:クレジットカードは新しく作れますか?また、住宅ローンは組めないのでしょうか?
個人信用情報機関に任意整理の履歴が残るため、基本的には新しいクレジットカードや住宅ローンの申し込みをしても審査が通らないでしょう。
家族カードの更新も出来なくなりますので、家族への説明も必要です。
Q12:債務整理を行うことで家族や保証人に迷惑がかかりますか?
任意整理を行っても、債権者による保証人への取り立てを止めることは出来ません。
家族や親戚が保証人になっている場合は、そちらへ督促されるリスクについてもしっかり考えておきましょう。
Q13:車は手放すことになりますか?
基本的には、車はそのまま使用することができます。
ただし、車のローンについて任意整理を行う場合、車は回収されてしまうケースが多いので注意が必要です。
Q14:会社や家族、知人にバレてしまいますか?
官報への掲載がされないため、任意整理は周りにバレにくい債務整理方法だと言えるでしょう。
ただし、ブラックリストへ登録されることによって家族用クレジットカードが更新できなかったり、保証人への取り立てが行われたり、万が一訴訟を起こされて給与が差し押さえになったりした場合、会社や家族に伝わってしまう可能性もあります。
完全に防ぎきることは出来ませんが、必ず返済ができるというプランを組み立てた上で債権者へ任意整理の相談をするのがポイントとなるでしょう。
まとめ
借金が膨らんでしまうと、どうしても思考も暗くなりがちで全ての資産の売却など最悪のケースばかり想像してしまうものです。
しかし、債務整理の手段を取ってもう一度生活を立て直した人は多く、上手に利用すれば助けとなる制度でもあるということを知っておきましょう。
上手く債権者と相談し、無理ないペースで返済計画を練ることができればいいですね。